97/168
ワイバーンと紅い軍勢 6
「いいのか? 下手に動くなって注意されたんだろ?」
「ええ、言われましたよ。しかし向こうが気付かなければ、非難される理由もありませんよね?」
「……ま、イタズラはバレなけりゃ大丈夫だしなあ」
ならそういうことだ。フェイはヘルメットをかぶり、角利にも同じ物を差し出す。
こっちは箒の運転なんて分からない。つまり前には彼女が座って、角利は後ろに座るわけだ。わけだが――
「どうしたんですか? 早く乗ってください」
既に気合十分なフェイは、少年の戸惑いを配慮する気配さえない。
運転席と後部座席の間には、自由な間隔がなかった。加えて後ろには取っ手のようなものが見当らず、運転手にしがみ付かなければならない。
つまり、フェイと密着することになって。
首を傾げている彼女を尊敬する反面、ちょっとした良心が声を上げる。