ワイバーンと紅い軍勢 4
「妙な視線を感じるかと思えば……まさかですね。どうして?」
「い、いや、お前がちょうど出ていくところを見てな? 何かあったのか、と思って追い掛けました。はい」
「ストーカーじゃないんですから……」
「あ、ああ」
さすが姉妹だった。
フェイは突き付けていた魔剣を解くと、何度も見たか細い手を差し出してくれる。重いモノを引っ張るのが不釣り合いな、心配になるぐらい細い手を。
角利はそれを断って、自分の力で起き上がった。
「……で、何しに行くんだ? こんな夜中に一人で出歩くなんて、優等生失格だと思うが?」
「おっしゃる通りです。せっかくですし、一緒に来ますか?」
「へ?」
今度は、角利が驚く番だった。
フェイはこちらの返答を待たずに進んでいく。まあ、心配なら一緒に来い、は間違った理論でもない。追い返されるよりは遥かにマシだ。
と、いつの間にか倉庫の前で足が止まっていた。破棄されて大分たつのか、あちこちにガタが来ている。こんな場所に何の用だろうか?
尋ねようにも、肝心なフェイの姿がない。しかし倉庫の方で物音は聞こえるので、何か動かしているんだろう。
近くにある寿命寸前の街灯が、戻ってくる少女の陰影を映し出す。
彼女が持ってきたのは、何をどう解釈しても、
「バイク?」
「いいえ、箒です」
無茶のある冗談だった。