ワイバーンと紅い軍勢 3
「いたっ!」
店の右手。人目を避けるためか、路地を奥へと進んでいく。
表通りへ行くには、店から左へ行くのが最短ルートだ、それを使用しないのであれば――やはり、人目を避けるためなんだろう。嫌な予感が膨らんでいく。
彼女を信じるためか、あるいは自分が納得したいのか。
素人による素人のための、ぎこちない追跡が始まった。
フェイは後方を疑うまでもなく、自信満々の足取りで進んでいく。対し、角利は抜き足差し脚。悪いことをしているのがこっちみたいで――いやまあ、許可もなく追跡してるんだから悪いんだろう。これじゃあヴィヴィアに言われた通りストーカーだ。
途中、フェイの勢いが増していく。
大股から早歩きへ。徐々に走る形へ変わっていき、角利との距離を離していく。
こうなったらこちらも走るしかない。フェイはちょうど曲がり角を曲がってしまった。この先に入り組んだ地形があれば、ものの見事にまかれてしまう。
物音を立てないよう、しかし急いだ、直後。
「っ!?」
抵抗する暇もない、文字通りの早業だった。
視界がひっくり返り、そのまま地面へ叩き付けられる。顔を上げた先には魔剣が突き付けられていて、脅しの準備まで完璧だった。
「か、会長!?」
「……よう」
軍人ばりの格闘技を放ったのは、もちろんフェイで。
見よう見まねの追跡調査は、最初からバレていたということだ。