ワイバーンと紅い軍勢 2
しかし直後には消えてしまった。ちょうど、フェイは布団に入ろうとしているらしい。彼女の寝室は一階、両親が使っていた場所を貸している。
折角だ。なんか寝付けない、とでも言って話をしよう。
だが変化はもう一度。
玄関から、鍵の閉まる音が聞こえたのだ。
以降、人の気配は途絶えてしまっている。どれだけ注意深く耳を傾けても、足音すら聞こえない。
「外に出たのか?」
独り言なので返事はなく、角利は一階まで駆け足で降りていく。
一通り家を見て回ったが、やはりフェイの姿はない。店の方も同じだ。せいぜい、昼間に使役していた妖精のなごりがあったぐらい。
「……」
考えたとしても、迷う理由はほとんどなく。
最低限の上着を羽織って、角利は夜の町へと繰り出した。
お迎えに来てくれるのは暗闇だけ。街灯も少なめで、ここが捨てられた場所であることを思い起こさせる。
実家の向こうに目をやれば、その感覚はなおさら強くなった。昼間にフェイが全力で暴れたため、荒れ地と言って大差ない光景となっているのだ。
修復は行うのか否か。
自分に関係ありそうでなさそうな疑問を胸に、フェイの姿を探し出す。