残忍な荒療治 11
大人の事情が頭に浮かんで、ついつい溜め息を零したくなる。
いくら魔術師が就職難、権威が没落していると言っても、誇りを嘘で塗り固めるのは止めて欲しい。きちんと謝罪して、誠意を示す方が立派じゃないか。
「あの、会長……?」
機嫌が斜めに成り始めたところで、フェイが下から覗き込んでくる。……曇った表情だが、それも一つの魅力を兼ね揃えていた。角度で色彩を変える万華鏡のような。
「魔物の話をしても、大丈夫なんですか?」
「へ? あ、ああ、そういや大丈夫だな」
何故だろう。病院では散々、これ以上なくみっともない逃げ方をしたのに。
気持ちが軽い。意識していなかったが、何か高い壁を乗り越えたような達成感がある。
「良かったですね、前に進めて」
彼女は本当に嬉しそうに。
見てるこっちが恥かしくなるぐらい、満面の笑みを浮かべていた。
感謝した方がいいのか分からなくて、角利は適当な返事でお茶を濁す。希望通りにフェイは話を打ち切ってくれたが、名残惜しんでいる自分がいた。
「……帰って作戦を練りましょう。もちろん、常識の範囲内で」
「あ、ああ」
悪戯心の入った横目で、フェイは角利を見つめている
可愛い――少年の感性は、どこまでも素直だった。