残忍な荒療治 10
「……しかし、疑問が残りますね。なぜオークは、ヴィヴィアをさらったんでしょうか?」
「確かにおかしいな。ふつう魔物ってのは、魔術師を餌にしか思ってないだろ?」
「ええ。まあ幻獣にしろ魔物にしろ、生態がハッキリしているわけではないのですが」
特別な理由があるのかも――彼女の心境を自分なりに読んで、襲ってきたオーク達の特徴を思い返す。
「なあ、連中って共食いとかしたっけか?」
「共食い、ですか? いえ、記録には確認されていませんね。……していたんですか? 病院を襲った連中は」
「ああ。っていうかこの事件、原因は何なんだよ?」
屋上から魔物が降ってくるなんて、どう考えても普通じゃない。
フェイには既知の内容らしく、一言間を挟んでから説明してくれた。
「どうも最上階で、魔物の研究を行っていたようですね。もちろん極秘です。責任者によると、昔の院長が行って以降、延々と続けていたとか」
「で、見事にやらかしたと。安全意識が欠如した、典型的な事件だったのか」
「ですね。もしかしたら会長の見た共食いは、実験の過程で生まれた特性かもしれません」
「なるほど」
まあ詳しいことは責任者が知っている筈だ。数日中にはギルドの調査も終わって、世間に事実が公表されるだろう。よっぽど黒かったら、一部隠蔽もありえそうだが。