目覚め、そして美少女 2
少女は跳ね上がるように肩を震わせた。着替えは殆ど終わっているものの、角利が起きていることは意外だったらしい。
威嚇するような目で、彼女はこちらに振り向いた。
今度は角利が肩を振るわせる番。彼女の視線は人並み以上に鋭く、親の敵を睨むよう。そりゃあ肌を見られたかもしれないわけでし、無理のない反応だ。整った容貌も、その威力を倍にしている。
「どちらさまで?」
口にした途端。
床に転がっている椅子が、真っ向から角利にヒットした。
理不尽だと反論する間もなく、仰け反った姿勢が天井を仰ぐ。
「……」
「……」
ちょっとした騒動が終わり、少年少女はテーブルを挟んで向かい合っていた。
椅子の直撃を受けた角利の顔はほんのり赤い。幸いにして痛みは引いているものの、これは文句の一つでも言いたくなる。自分はただ、自分が所有する建物で寝ていただけなのだし。
一方、少女も顔の赤さは抜け切れていなかった。
恥かしさからか、怒りからか。しかし角利にとってはどちらでも良く、可愛らしいものにすら見えてくる。
名も知らない魔術師は、筆舌に尽くし難いほどの美少女だった。
生真面目で大人びた顔と、鋭い目。大企業に所属する美人秘書を思わせる。肌も始めてみた時の印象を変えず、赤面のほどが一目で分かった。
年齢を考慮しないのであれば、美少女、よりも美女の称号が似合う。きっと学校では男子生徒から注目の的だろう。――刃のように鋭い視線を、何も思わないのであればの話だが。
この美少女についてはそれが惜しい。今も角利を見つめる彼女は、敵意以外の一切がなくて――ああいや、だから仕方ないんだって。
ともあれ、容姿以上に印象的な目をしているのは間違いなかった。色は深い青。雲ひとつない空のようで、淀みというものが見当らない。
髪は金色で、腰の辺りまでストレートに伸ばしている。染めた色というよりは血筋からの純粋な色だ。特別な身分の少女ではないかと、直感が囁いている。
なので余計に角利の身は固くなった。外国人と話したことはないし、そもそも彼女、日本語大丈夫なんだろうか?