残忍な荒療治 6
「なあ、フェイって嫌いな対象と憎い対象は同じか?」
「……なに詩人みたいなこと口にしてるんですか? まあ、言わんとしている意味は分かりますが」
「お、そうか。じゃあ教えてくれ」
「別ですね。一般人が敵か、魔術師が敵かの区別ぐらいですが」
首を縦に振りながら、角利は言葉の意味を考えてみる。
といっても、彼女が言った以上の事実はあるまい。群れた魔術師は憎い、群れた一般人は嫌い。前者がより強い感情なのは、フェイ自身が魔術師だからか。
愛した理想、それを正反対に写した存在を見たくない。
端的に言えばそんなところか。やはり御法とは違う。彼の場合は魔術師も人間も、弱ければ憎い対象として処理する。
「嫌いだからと、私は一般人を蔑ろにする気はありません。守るべき対象ではないかと考えています」
「爪の垢でも煎じて、爺さんに飲ませたいねえ」
正直、御法の孫として生きて来られたのが不思議に思えた。
いや実際、自分は彼のことを何も知らなかったんだろう。さっきの虐殺も、祖父は何食わぬ顔でこなしていた。孫の存在など、戯れ程度に容認していたのかもしれない。
ショックはある。偉大な魔術師として、尊敬の対象だったのだ。
しかしあんな光景を見せつけられたら、言い訳をする方が苦しい。時間は掛かるだろうが、徐々に受け入れていくしかあるまい。