残忍な荒療治 4
「ん……」
「あ、会長。大丈夫ですか?」
重い頭を必死に動かして、角利は上半身を起こした。
辺りにはやはり騒がしい空気が残っている。当然だろう。何十という人間が一人の魔術師によって焼死したのだ。お茶の間まで、その残虐行為は行き届いているだろう。
視界を右に動かせば、彼らが受けた苦痛の名残が目に入った。
それだけ気分が悪くなる。あんなにも生々しく人が死んだのだから、ごく自然の反応かもしれないが。
「……爺さんは?」
「すでに立ち去りました。ギルドが捜索に当たっていますが、手掛かりはまで掴めていないと」
「そうか……」
力になってやりたいが、御法とは私生活での繋がりを持たない。家だってまったく違う場所にある。
ギルドや政府の力を信じるしかあるまい。もちろん、協力を求められれば応じるが。
「……」
にしても、あそこまで残忍な祖父は始めて見た。彼にすれば信念上の必然だったんだろうが、やり過ぎている。同じ社会に暮らす人間とは思えない。
無論、その理由は御法に通用しないだろう。でなければ彼が、魔術を特権として扱う理由がなくなる。
倫理観の決定的な断絶。極端な話が、違う時代の人間。あの青年が化石と称したのも同じ理由からだ。
これで御法は社会的な地位を失う。犯罪者として、世間から追われる立場になる。
しかし、そこに後悔はないのだろう。むしろ首を傾げるに違いない。自分はただ、当然のことをやっただけ、と。