残忍な荒療治 3
もう一度、姉は妹の顔を覗く。
表情が切り替わった――その直後だった。
大勢の悲鳴が、空に上ったのは。
燃えている。
病院の前に集まった野次馬が、炎の海に溺れている。
「な――」
誰も彼も声が出ない。激痛に炙られる者の悲鳴が、耳の奥まで届いてくる。
原因なんてどこにもなかった。近くの車が爆発したわけでも、マッチに引火したわけでもない。本当に脈絡がなく、野次馬を狙ったように燃えだしたのだ。
「さあ、何を躊躇う?」
悠々と近付いてくる、男の声。
御法だった。
「生贄ならそこにいくらでもおる。さっさと使うがいい」
「じ、爺さん、アンタ……」
「少々うるかったのでな、まとめて一掃した。しかし、お前達には好都合だろう?」
誰も、首肯する者はない。
手が出せない惨劇を、しっかりと記憶するだけだ。
「――何もせんのか。つまらん、ワシがやる」
「あ」
ヴィヴィアの周りにいる数名を押し退け、御法は魔術を発動させる。
治療は数秒の間に表面化した。肌に血の気が戻り、うっすらと目を開けてもいる。……変わりに吸われていく命の数々が、映ったのかどうかは不明だが。
しかし角利にはもう、見えない。
体力と精神の限界から、ゆっくりと目を閉じる。