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魔術師は現代社会に殺される  作者: 軌跡
第二章 弱者の居場所
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残忍な荒療治 3

 もう一度、姉は妹の顔を覗く。

 表情が切り替わった――その直後だった。

 大勢の悲鳴が、空に上ったのは。

 燃えている。

 病院の前に集まった野次馬が、炎の海におぼれれている。


「な――」


 誰も彼も声が出ない。激痛にあぶられる者の悲鳴が、耳の奥まで届いてくる。

 原因なんてどこにもなかった。近くの車が爆発したわけでも、マッチに引火したわけでもない。本当に脈絡がなく、野次馬を狙ったように燃えだしたのだ。


「さあ、何を躊躇ためらう?」


 悠々と近付いてくる、男の声。

 御法だった。


「生贄ならそこにいくらでもおる。さっさと使うがいい」


「じ、爺さん、アンタ……」


「少々うるかったのでな、まとめて一掃した。しかし、お前達には好都合だろう?」


 誰も、首肯する者はない。

 手が出せない惨劇を、しっかりと記憶するだけだ。


「――何もせんのか。つまらん、ワシがやる」


「あ」


 ヴィヴィアの周りにいる数名を押し退け、御法は魔術を発動させる。

 治療は数秒の間に表面化した。肌に血の気が戻り、うっすらと目を開けてもいる。……変わりに吸われていく命の数々が、映ったのかどうかは不明だが。

 しかし角利にはもう、見えない。

 体力と精神の限界から、ゆっくりと目を閉じる。


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