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残忍な荒療治 1
病院から脱出した二人だが、問題が終わるにはまだ早い。
ヴィヴィアだ。病院前の広場に避難した彼女は、血の気がない表情で横になっている。……医師と看護師たちが忙しく動いているが、聞こえる声は現状を嘆くものばかりだ。
生贄。
外部から魔力を補充するには、ほかに方法がない。
人の姿自体は、余るぐらい視界に入る。野次馬も続々と現れ、魔術師に対する罵倒を飛ばしていた。更には通行まで制限しており、調査に訪れたギルドのメンバーが足止めされてしまっている。
彼らを生贄に出来れば――なんて悪意のある思考が沸いた途端、角利は一点の光を見た。
「死刑囚」
「え……」
「死刑囚だったら、魔力補充の生贄に出来ないか? 問題は最小限に抑えられると思う」
「それは……」
話を聞いていた担当医が首を振る。それしかない、と。
しかし肝心のフェイは、なかなか動こうとしなかった。
「な、納得できません。この子にそんな、人の命を背負わせるなんて……」
「でも他に方法はないぞ。……誰も文句は言わんから、フェイが決めてくれ」
「――」
眠っている妹へ、フェイは顔を向ける。