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魔術師は現代社会に殺される  作者: 軌跡
第二章 弱者の居場所
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乗り越えるために 9

「く……」


 立ちはだかる過去が、角利の認識をいつけた。

 だから、ここから数秒が最後の機会。

 燃え尽きる炎が魅せる、有終の美というやつで。


「ば――抜刀!」


 震える唇が力を結ぶ。

 召喚された剣で、狙うは真下。

 死角からの奇襲が、土壇場で導いた結論だった。

 総力を叩き込み、床を砕く。重力に引かれ、角利は瓦礫がれきと共に四階へ。


「な――」


 驚愕は青年、フェイ双方のもの。


「うおおぉぉぉおおお!!」


 咆哮はもう、悲鳴の一歩手前だった。

 敵の無防備な背中へ、一直前に飛びかかる――!

 作戦は功を奏し、流れが直ぐ角利へと傾いた。数度の剣戟けんげきを交える頃には、青年の唇が歪んでいる。

 しかしこちらも、限界はとうに超えていて。

 いつの間にか放たれた蹴りを、認識することさえ出来なかった。


「ご、ほ――っ」


 よろめく角利。吐き気がしている中で腹に蹴りを喰らうなんて最悪だ。

 しかし最悪なのは向こうも同じなのだろう。青年はローブを靡かせ、直ぐに非常階段へ。

 待て、と叫ぶ間もなく、その姿は宙に消えた。

 あとは静寂。上にいたオーク達は、別の場所に移動してしまったらしい。

 あるいはギルドのメンバーに討伐されたのか。連続する足音、近付いてくる人の声が、安全の訪れを証明している。


「……本当に、もう」


 フェイは完全に呆れ顔。

 でもちょっとだけ笑っていて、自分の成果を認められる。

 ああ、助けられたのだと。誰も犠牲にならなかったと。

 あの事件からやっと、自分の力を誇りに思えた。


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