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乗り越えるために 6
「非常階段を使いましょう。正面玄関はオークが群れを作っていました」
「い、いいのか? ヴィヴィアは……」
「さきほど、救援に訪れたテュポーンのメンバーから情報が入りました。脱出した入院患者の中に、妹の姿があったそうです」
「そ、そうか……!」
襲われたような痕跡が残っているが、彼女とて魔術師。魔物を倒す術はあったんだろう。
二人は急いで、廊下の奥にある非常階段を目指す。
だが。
階段手前の天井をぶち破って、人影が降りてきた。
「な……!?」
乱入者は男。魔術師の衣装であるローブを纏い、色でその所属を示している。
学園のものではない。大手ギルド、それも二人が今日見たもの。
フェイを襲い、角利と一緒に逃走した青年。
非力な筈の彼が、立ちはだかった障害だった。
「……何のつもりですか?」
フェイに怯えはない。正面から堂々と、敵意と疑問を青年にぶつける。
彼は片手に身の丈ほどの大剣を握っていた。追手に恐怖し、逃げ回っていた人物とは思えないほど勇ましい。
ぎ、と彼は壊れた機械のような呻きを上げる。