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乗り越えるために 2
緊張している所為か、息が上がるのが早い。早々に休憩したい気分だが、遅れればヴィヴィアの危険が増す。
魔物はいないのだ、ここ瞬間で気合を入れなくてどうするのか。
二階、三階――踊り場に見るフロアの表記を見る度、少し身体が軽くなる。
四階、目的地に入った。
ところどころが荒されているものの、人的被害は見当らない。全員、脱出に成功したのだろう。この短時間にこれだけの手際、さすが大病院といったところか。
「――」
四治事件の光景が、脳裏に蘇る。
パニックを起こしかけて、角利は自力で現実へと戻ってきた。怯えている場合じゃない。せめてヴィヴィアの病室を確認しなければ。全員が脱出した確証はないのだ。
逃げ遅れた人はいないかと、首を左右に振る。
そう、見ていたのは左右だけ。
背後にいる悪魔の気配には、直前まで気付かなかった。
「う、うああぁぁあああ!?」
大声を上げて、脱兎のごとく走り出す。