二つの病、二つの現実 13
真一文字に切り裂かれたオークは、呻き声と共に地面へ沈んだ。
それでもフェイに安心感はまったくない。濁流のように出てくる人々を一人一人確認している。中には入院患者らしき者もいるが――
「あの子、四階に……!」
焦る気持ちは当然だった。オークは最上階から落ちてきたのだ。
病院は全六階建て。中に魔物が残っているとすれば、ヴィヴィアがいつ襲われても不思議じゃない……!
「会長は退避を。私は魔物を撃破しつつ、ヴィヴィアの救出に向かいます」
「ま、待て、お前一人でか!? いくら何でも危ねえぞ! 直ぐにギルドの人達がすぐ来るし、ヴィヴィアだって逃げてる最中かもしれん! もう少し待って――」
「お気持ちは察しますが、事は一刻を争います。こうしている間にもあの子は危険に晒されているかもしれない」
「――」
気持ちは察する、だなんて。……ああ、確かに自分は、魔物が怖くてフェイを止めた。
力になんてなれないから、他の誰かに変わって欲しくて。自分が助けなくっても、心が痛まない他人に動いて欲しかった。
ダメだ。
いつまでもいつまでも、後ろ向きじゃいられない。
「なら俺も行く」
「……足手纏いです。敵の戦力も判明していない。万が一の場合、見捨てる場合にもなりますよ?」
「臆病者の逃げ足を舐めないでもらいたいな。いま出てきた人たちと同じように、ヤバイ時は一人で逃げる。――だから最低限、ヴィヴィアをおぶったりは出来るさ」
「……まったく。訂正します」
二人で向いた病院の入口。出てくる人の数は減っていて、丁度いいタイミングを示していた。
「そういう頑固なところ、お爺さんとそっくりですよ」
「褒めてもらえて嬉しいね……!」
突入する。