失敗活動 6
いつも使っているカウンターの椅子を引いて、角利はようやく腰を降ろす。
店の中は、外と同じぐらい暗かった。太陽の光が届かない上、一部にカーテンを掛けていればそりゃあそうだろう。夜はロウソクと一緒じゃなければ歩けたもんじゃない。
カーテンを開ければ少しは改善するんだろうが――その気持ちにはなれなかった。
正確な理由は分からない。ただ、自分なりに分析するなら、店の有様を外に見せたくないからだろう。
身も蓋もない言い方をすれば、廃墟だった。
倒れたテーブルと椅子、砕け散った食器の破片。強盗にでもあったんじゃないか、と聞かれそうな荒れっぷりで、喫茶店としての体を成していない。
本来なら、角利が片付けて然るべきなのだろう。……しかしこうも荒れていると、どこから手を付ければいいのかサッパリだ。
あの賑やかな光景を、決して捨てたいわけじゃないのに。
社会的に自立できていない、その期待が持たない無力感と失望。明確に描けない未来が、足枷となって角利を縛り付けている。
「……何だか、眠くなってきたな」
昼食はまだだって言うのに。授業の疲れだろうか?
抑えきれないあくびと睡魔。ああ、駄目だ、短くて良いから寝よう。カウンターに突っ伏して寝るなら、短い時間で起きれる筈だ。
鉛のように重い目蓋が、自然と閉じる。
朦朧とする中で聞こえたのは、入店を知らせる鈴の音だった。