二つの病、二つの現実 11
苦虫を噛み殺したように、角利は沈黙してしまった。
生存への諦観――かといって、ヴィヴィアを責めるのは間違いだろう。暴走症に治療法が存在しないのは、さきほど耳にしたばかりである。彼女の判断は合理的だ。
納得できない心を表にしても、お節介の域を出ない。
角利にどれだけ説得力があろうと、結局は個人的な感情だ。姉妹の絆に割って入るなんて、無粋でしかない。
「……本当は、この病院にも入る予定はなかったんです。御法さんにも迷惑をかけるから、と」
「別に気にしないと思うけどな……」
「しかし入院費用の大半は彼です。私もギルド間でバイトじみたことはしていますが、大した収入ではありませんし」
自分を責めているのか、言い終えた彼女には溜め息があった。
角利は何一つ反論できない。……せめて綺麗事で誤魔化せるぐらい、口達者であれば良かったんだが。
「……おかしいですよね、私。弱い魔術師は不要だと言っておきながら、死にかけの少女を守りたがるなんて」
「……」
正面から意見をぶつけられず、角利は沈黙するしかない。
直後だった。
病院、最上階の窓ガラスが粉砕されたのは。