二つの病、二つの現実 6
不治の病。生かすだけで精一杯の、閉じられた命。
魔力は魔術師の体力と同義だ。それが吸い尽されるのであれば――衰弱死、という形になるのだろう。幻獣の召喚、維持はただでさえ魔力の消費が大きいと聞く。
「こう言っちゃなんだが、腕を切り落すとかじゃ駄目なのか?」
「ヴィヴィアは試していませんが、過去に実行し、失敗した例があります。直ぐに再生してしまうんだとか」
「困ったもんだな……幻獣だって、やりたくてやってるわけじゃないだろうに」
「でしょうね。幻獣は魔術師と契約した異界の協力者であり、こちらは言うなれば食糧の提供者。相互扶助の関係で、害意を持っているわけではありません。魔物は別としても」
「アイツら、基本的に契約を失った幻獣なんだよな? 暴走してるって感じで」
「ええ」
学園の授業でも習う。かと言って、同情するような視点は育成しない方針だ。
昔はそうでもなかったらしいが、今は魔術師の存在意義が問われる時代。銃器などの近代兵器も存在する以上、魔術師が専門的な立場を取れる敵はありがたい。
不謹慎な言い方ではあるだろう。学園でこんなことを大声で言ったら、きっと先生達に、御法に叱られる。
しかし、現実だ。
召喚暴走症も、幻獣の変質、脅威という認識を煽るのに利用されているかもしれない。