二つの病、二つの現実 5
「よし、じゃあ帰ろう。……って、フェイの家はどこなんだ?」
「病院の近くにあるマンションです。……入らないで下さいよ? 整理だってしてないんですから」
「妖精でも雇ったらどうだ?」
考えておきます、との相槌を聞いて、二人は待合室を後にした。
外では日が傾きつつある。道路を挟む街灯は黄昏色に染まっていて、夜の訪れを誘う門のようだ。
「そういえば、妹はどうでしたか?」
「元気そうだったぞ。病人には思えなかったぐらいだ」
「そうですか……あの子には随分と苦労をかけていますから、元気そうで何よりです」
「――何の病気なんだ? 妹さんは」
力になりたいと思ったのか、それともまた好奇心か。
沈んだ横顔を見るのは、知り合ったばかりでも辛かった。
「……召喚暴走症、というのはご存知ですか?」
「いや、初耳。もしかしてヴィヴィアの左腕か?」
「はい。私や会長は魔剣の召喚――武装召喚を用いますが、彼女は幻獣召喚という魔術の使い手でして。……子供の頃、術を発動させる際に事故が起こったんです。そのため左腕に幻獣が憑依している状態で」
「治る、のか?」
「症状の進行を遅らせることは可能ですが、現状ではほぼ不可能だそうです。最終的には魔力を吸い尽されて、死にいたる、と」
「……」