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二つの病、二つの現実 4
「と、とりあえず顔を上げてくれ。俺は怒ってるわけでも、疑ってるわけでもないぞ」
「で、でしたら、何故――」
「まあ好奇心だな。爺さんと似てるとか、そう言われると思ったんだけど」
「お爺様? 会長のお爺様とは私、面識がありませんよ?」
「いや、四治御法。さっき会ったばっかりだろ? 俺の祖父だよ」
「――」
今度も驚く彼女。……さっきから同じ反応ばかりで、だんだん苛めている気分になってくる。
「も、申し訳ありませんっ! 苗字が偶然にも同じなのかと……!」
「いや、だから謝るなって。逆に息苦しいぞ。爺さんがいくら君の恩人だからって、俺は何もしてないんだから」
「し、しかし……」
「じゃあ取り合えず、俺と爺さんが似てるかどうか教えてくれ。それで手を打とう」
「似てません」
一刀両断だった。
期待を外された気分で落ち込むが――まあ、当り前だろう。ワシとは似ていないな、が角利に対する御法の口癖だった。父とは親子なだけあって、雰囲気が近かったんだが。