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二つの病、二つの現実 3
「……なあ、フェイって人懐っこい性格じゃないよな? ヴィヴィアはそうみたいだが」
「え、ええ、確かに妹と私は正反対の性格ですね。それが?」
「積極的に俺の面倒を見ようとしてる気がするんだが、気のせいか?」
「――」
絶句、の表現がピッタリなぐらい、彼女は衝撃を受けていた。
ややあって、急に角利へ背中を向ける。何やら呟いており、聞こえる範囲を言うと妹への恨みだった。そうえば由利音いわく、フェイは土足で自分の中に入られるのが嫌いなそうな。
誤った方がいいかもしれない。行き過ぎた好奇心を反省して、なあ、と短い前置きを作る。
「……白状しますと」
白旗を上げたのは、彼女の方が先で。
「妹と貴方が、重なって見えたもので。申し訳ありません」
「……」
絶句は角利の番だった。
どうしてそこで謝る? 悪いことなんて一つもない。なんせ、彼女の大切な人と重ねてくれたのだ。角利が感謝するのを、黙って待ったっていいんじゃないか?
しかし今も、謝意に訂正は入らない。見本にしたいぐらい綺麗な姿勢で、深々と頭を下げている。