失敗活動 5
辺りの雰囲気は、町の構成によって一変する。
感想を言うなら、とにかく暗い。太陽が昇る南側を高層建築物が埋め尽くしているためだろう。まるで路地一帯を隠すように、彼らは高々と聳えている。
――異界と呼ぶのはオーバーかもしれないが、路地は表通りの喧騒から完全に切り離されていた。この場所が、この社会にあってはならない存在だと言うように。
とはいえ子供の頃から利用している身には、特別な感慨など浮ばない。始めの頃こそ不満を覚えたりはしたが、やっぱり少年時代の話。忙しい毎日を過ごす中で、どうでもいいと割り切ってしまう。
「でも本当、せめて朝ぐらいはな……」
日差しが差し込んだりはしないもんか、と路地を歩きながら一人ぼやく。
路地の一帯は景色として暗いばかりか、そこにいる人間達までも暗くしていた。すれ違うのは見窄らしい格好の浮浪者ばかり。時折こちらに向けられる視線は、買ったばかりの弁当を狙っている。
角利の足は必然的に早く、視線を振り切るべく焦り始めた。
背中を押す理由は一つだけじゃない。……路地にいる浮浪者の殆どが、職を失った魔術師だからだ。見れば角利のように若い者もおり、同情と恐怖心が湧きでるのもしばしば。
自分も、近いうちにああなるのでは――
路地を進む速度は余計に早くなる。まるで、不都合な現実から目を逸らすように。
緊張感から解放されたのは、それから間もなく。魔術組合・四治会、と小さい看板を下げている――まあ喫茶店だろうか。自宅と事務所も兼ねているが、外見は喫茶店に近いのでそう呼ぼう。
「ただいまー」
店に入ってから声を出しても、迎えてくれる人はいない。