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魔術師は現代社会に殺される  作者: 軌跡
第二章 弱者の居場所
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嵐の前触れ 9

 医者を呼ぶことも提案する彼女だが、角利は首を横に振る。大丈夫だと。しばらくすれば収まると、必死に呼吸を繰り返す。


「――はぁ、悪い」


「い、いや、本当に大丈夫? すっごい顔色悪いよ?」


「大丈夫だ。しばらくすれば――」


「会長!?」


 驚くというより、悲鳴に近い声。

 急いでやってきたフェイが、信じられないという顔付きで立っていた。


「急いで専門家のところへ行きましょう! ここなら魔術師の医者もいます!」


「へ、平気だ、このぐらい――」


「真っ青な顔で言われても困りますよ。さあ、肩を貸しますから」


「はあ……」


 よけい沈んだ気分になるものの、大人しく従うしかなさそうだ。自分がこんな状態じゃ、姉妹もじっくり話したり出来ないだろうし。

 前をフェイから、後ろをヴィヴィアに支えられて、角利はゆっくりと腰を上げる。

 ホールを去ろうと歩き始めた、そのちょっと前。


「――?」


 ヴィヴィアの左手が視界に入る。指先まで、包帯で窮屈そうに撒かれた左手だった。

 しかし大きさが合ってない。少女の体格に対し、一回り以上大きいような。


「さ、行きますよ」


「あ、ああ」


 本人がいる手前聞き返すことも出来ず、角利はエレベーターを目指して歩く。

 じゃあね、と手を振るヴィヴィア。


「……お姉ちゃん、奥さんみたい」


 最初っから変わらない妄想を、羨ましそうに零していた。



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