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嵐の前触れ 8
「裏を返せば真面目な人なんだと思うぞ? 今だって、セイメイの学長やってるぐらいだからな」
「へー、偉い人なんだ。確かに雰囲気のある人だよね」
「歴戦の猛者だからな。魔術師の現状について、あの人以上に熟知してる人もいないだろ」
「……何か、生活を支えてもらったのが申し訳ないような」
「別に悪く思う必要はねえって」
御法も好きでやっていることだ。珍しいと言えば珍しいのだが。
……確かに少し引っ掛かる。病にかかった人間の支援は、祖父が最も嫌うところだ。学長へ就任する以前、この病院からセイメイの名を捨てろ、なんて豪語していたぐらいだし。
心境の変化でもあったんだろうか? それなら正直、四治会にも支援して欲しいのだが。
「ねえねえ、角利さんはお祖父さんのこと、どう思ってるの?」
「尊敬はしてる。魔術だって、あの人から教わったようなもん――っ」
そこには、父と母の姿もあったっけ。
目眩と頭痛。心情が行き着くのは、禁断の記憶に触れた痛みだけだ。事前情報を知らされていないヴィヴィアはうろたえるしかない。