嵐の前触れ 7
「うちの両親、アタシ達が小さい頃に亡くなっててね。もう十年以上かな、金銭面とかで助けてくれてる人がいるの。御法、って名前のお爺さんなんだけど」
「――俺の祖父だ」
「えっ!?」
ヴィヴィアはまたもや目を輝かせる。姉のことを猫だと言ったが、この子の方がよっぽど猫らしくないだろうか。
「ど、どうして知ってるの!? もしかしてストーカーさん!?」
「歪みきった解釈は止めろ! ただの孫だよ!」
「えー、ホントー?」
本当だ、と答えてから生徒手帳を差し出す。身分の証明には十分だろう。
彼女もきちんと目を通してくれるが――首を傾げてばかりで、角利の答えに納得しようとはしない。
「――本当に孫? あのオジサン、凄腕の魔術師だと思ったんだけど」
「申し訳ありません不遜の孫で」
「……成績だけ見ると冗談にならないから止めよ? っていうか、あの人に孫がいたなんてねー。意外」
「まあ爺さん、そこまでお喋りじゃないしな」
祖父が一緒に住んでいた頃を思い出す。
彼は職人気質な男で、無駄な話を好まなかった。人生にハッキリとした意味を見出し、寄り道をしない性格だからだろう。
お陰で近寄り難い人物像に仕上がっていたと思う。反面、頼れるのも間違いなかったが。