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嵐の前触れ 6
「お姉ちゃん、警戒心が結構強いからね。臆病、って言ってもいいのかな? 異性同性を問わず、事務的な対応を取ることが多いんだけど……」
「な、なんだ?」
彼女はまた顔を近付ける。少しでも押されたら、接触事故を起こしそうな至近距離。離れなければと思うが、好奇心一杯の瞳に吸い込まれていく。
フェイと同じ美少女なのもあるだろう。時間が立つにつれて、この状況を幸せに思う自分がいた。
「角利さん、誰かに似てる。誰かな……だからお姉ちゃん、すぐ懐いたと思うんだけど」
「動物みたいだな……」
「一線を越えると直ぐデレッとする辺り、猫みたいじゃない? ――あ、分かった! オジサンだ!」
「ちょっと待て! 俺はれっきとした17だぞ!?」
「いやそういう意味じゃなくて! 私たちの生活を支援してくれる人のこと」
「支援?」
何だか、入ってはいけない領域に足を突っ込んだような。
急いで話題を切り替えようとするも、手遅れだった。ヴィヴィアは何食わぬ顔で、重い過去を告白する。