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嵐の前触れ 4
「……」
いささか気分が落ち着かない。始めての場所というのもあるだろう。エレベーターは幸い一人だけでの利用だが、四階までの道は長い。
というか。
「なんで俺一人なんだ……」
肝心なフェイは同行してくれなかった。
どうも、担当医から病気の進行状況について説明があるらしい。家族であるフェイが一番話すべきだろうに、何故こちらが一任されてしまったのか。
まあ考えてもしかたない。彼女の方だって、無視できる用件ではない筈だ。
エレベータは運良く、目的地までノンストップ。
出たところで見えたのは、自販機も揃った休憩用のホールだった。円形の机がいくつか置かれており、入院患者やその身内らしき人々が利用している。
「あ、こっちこっちー!」
病院とは思えないぐらい、底抜けに明るい声。
ただ、由利音に比べると幼さというか、無邪気な印象を受ける。二つ年下と聞かされたし、間違った感想ではないだろう。
目的の少女は、一番奥の椅子に座っていた。