嵐の前触れ 3
「妹からの電話でした。どうにも納得できませんが、会長と話がしたいそうです」
「そりゃまた。お姉さんは随分と大変だな」
「ええ。――他人の世話をするのは、私の性に合ってるみたいですけど」
心配性から出た嘆息は、苦労人に相応しくて。
どことなく楽しんでいる横顔が、紅い唇を優しくしていた。
セイメイ附属病院、というのが目的地の名前らしい。
この辺りでは有名な病院なんだろう。正面玄関を潜ると、まず出迎えるのは広い待合室。受付の方では担当者が忙しなく動いており、規模を実感させてくれる。
位置関係としては代々木公園の近くだ。お陰で昨年、デング熱が流行した時は大慌てだったらしい。まあ魔術師は体質上かからず、学園ではほとんど騒がれなかったが。
セイメイの名が示す通り、ここは魔術師の医師も所属しているとか。……正直、耳を疑いたくなる。喧嘩ばかりしていると思っていたのに。
もちろん、前向きな進展だ。祖父じゃあるまいし、否定する気は毛頭ない。
ただ、少し自分が恥かしかった。喧嘩ばかりしている――そんな発想が出てくる辺り、御法の影響を少なからず受けている証拠だ。血は争えない。
溜め息を零しながら、角利へ右手奥にあるエレベーターへと乗り込む。フェイの妹は四階に入院しているそうだ。