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嵐の前触れ 2
無言で去るわけにもいかず、角利は電話が終了するのを待つ。
「――え? ギルドの方? それならまあ、限定的な所属、ってことで決着したわ。いま学校で会長と一緒だけど、直ぐそっちに行くから」
家族とでも話しているのか、フェイは砕けた口調となっている。笑顔まで混ぜて、本当に楽しそうだ。
角利にとっては少し、傷を抉る光景でもあるけれど。
「――は、はあ!? 会いたい!? 会長に?」
憂鬱な気分になり掛けた時、彼女は突然声を荒げた。
どうも受話口の誰かが角利と会いたがっているらしい。フェイは断固反対の様子で、徹底的に不安要素を叩き込んでいる。……こちらの誹謗中傷まで混じっているのはどうなんだろう?
しかし彼女が頑固なら、向こうの相手も同じらしく。
一方的に、通話は切れてしまったようだ。
「なんか、大変そうだな」
「他人事みたいに言う方ですね」
他人事なんだから仕方ない。
フェイはもう一度その誰か連絡をかけるが、しばらくたって携帯を戻す。角利は何も言わず、ただ好奇心だけを向けていた。