失敗活動 4
「ありゃ、また唐揚げ弁当? 同じ物ばっかり食べてると栄養が偏るよ?」
「いやあ、好きなもん食おうとすると、だいたいこうなっちゃって。やっぱ少しは自炊した方が良いッスかね?」
「安上がりになるからねえ。何ならお姉さんが手取り足とり教えてあげよっか?」
「うち、ガスも電気も通ってないッスよ?」
「――」
暗い話題に踏み込んだ所為か、ごめん、と由利音は謝罪する。
しかしデリカシーに欠けていたのは角利も同じで、直ぐに相打ちの形となった。
「……でも、今月は大丈夫なんじゃなかったっけ? 学園から支援金もらったって聞いたけど」
「今月は、ですけどね。また来月になったら滞納ッスよ。そりゃああれば便利なんスけど、無理にやっちゃうと――」
「住んでる場所を手放さなきゃならない、か。……ねえ、いっそのこと手放したら? 確かにあの家は、亡くなったご両親の形見みたいなもんだろうけど――」
「出来るなら残したいんですよ。俺、両親が死んだ時のことよく覚えてませんし」
「でも……」
由利音の心配には飾り気がない。昔馴染みの知人として、角利の不幸を我が身のこととして考えている。
それが情けなくて、取れる態度は見栄ばかりだ。
「大丈夫ッスよ。両親が残してくれたお金もありますし、もうしばらくは持つでしょう」
「……どうしようもない時は言ってね? 寝泊りする場所なら、提供してあげられるからさ。うちの両親も心配してるんだよ?」
「それは何か、ますます申し訳ないような」
ビニール袋に入った弁当を受け取りながら、角利は苦笑で応じていた。
午後の授業も控えているし、長々と立ち話をするわけにはいかない。ちょうど顔を出した店長にも会釈して、足早にコンビニを後にする。
正面に広がる大通りへ背を向け、角利はビルの裏側にある路地へと入った。