表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔術師は現代社会に殺される  作者: 軌跡
第一章 EとS
5/168

失敗活動 4

「ありゃ、また唐揚げ弁当? 同じ物ばっかり食べてると栄養が偏るよ?」


「いやあ、好きなもん食おうとすると、だいたいこうなっちゃって。やっぱ少しは自炊した方が良いッスかね?」


「安上がりになるからねえ。何ならお姉さんが手取り足とり教えてあげよっか?」


「うち、ガスも電気も通ってないッスよ?」


「――」


 暗い話題に踏み込んだ所為か、ごめん、と由利音は謝罪する。

 しかしデリカシーに欠けていたのは角利も同じで、直ぐに相打ちの形となった。


「……でも、今月は大丈夫なんじゃなかったっけ? 学園から支援金もらったって聞いたけど」


「今月は、ですけどね。また来月になったら滞納ッスよ。そりゃああれば便利なんスけど、無理にやっちゃうと――」


「住んでる場所を手放さなきゃならない、か。……ねえ、いっそのこと手放したら? 確かにあの家は、亡くなったご両親の形見みたいなもんだろうけど――」


「出来るなら残したいんですよ。俺、両親が死んだ時のことよく覚えてませんし」


「でも……」


 由利音の心配には飾り気がない。昔馴染みの知人として、角利の不幸を我が身のこととして考えている。

 それが情けなくて、取れる態度は見栄ばかりだ。


「大丈夫ッスよ。両親が残してくれたお金もありますし、もうしばらくは持つでしょう」


「……どうしようもない時は言ってね? 寝泊りする場所なら、提供してあげられるからさ。うちの両親も心配してるんだよ?」


「それは何か、ますます申し訳ないような」


 ビニール袋に入った弁当を受け取りながら、角利は苦笑で応じていた。

 午後の授業も控えているし、長々と立ち話をするわけにはいかない。ちょうど顔を出した店長にも会釈して、足早にコンビニを後にする。

 正面に広がる大通りへ背を向け、角利はビルの裏側にある路地へと入った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ