祖父と孫、下心 4
「失礼します」
視界が、一気に開けた。
部屋は学園のトップが居座るのにふわさしい内装となっている。高そうなソファー、ショーケースに収められた無数のトロフィー。天井の棚には歴代学長の顔写真、似顔絵まで。
彼らは、いかにも堅物そうな人ばかりだった。きっちり威厳も備わっていて、どこかの王侯貴族と見間違えそうになる。
現役についても、それは然り。
当の学長は入口に背を向け、ガラス張りの壁から校庭を俯瞰している。来客へは肩先すら向けない。外を眺めている方が楽しいんだろう。
角利はあせらない。学長の性格なんて、十七年近くの人生で把握している。
彼が動いたのは、それから間もなく。
「よく来たな、角利」
低い、厳粛な声だった。
フェイはより緊張を強めている。まるで、部屋の空気感で身を引き締めるような。第三者が来れば学校であること疑うかもしれない。
睥睨にも見える学長の視線。本人としては平常運転なのだから、本当に始末が悪い。
頬に入った痛々しい切り傷、座っていても分かる体格の良さ。冗談抜きで軍人だ。あるいはヤクザの親玉とでも言うべきか。
しかし角利は平然とした態度を崩さない。学長の方も気分を悪くする様子はなく、薄っすらと笑みを浮かべている。