祖父と孫、下心 3
「会長、天然だと言われたことは?」
「思ったことを口にし易い男だな、って言われたことならある。両親に」
「素晴らしいご両親ですね。……授業の方ですが、出席する際は私も同席します。貴方の素性は隠さなければいけませんし」
「さ、さすがにそれはいらな――」
目の笑っていない笑顔が飛んできた。こちらに選択肢はないらしい。
本当に申し訳ないが、安心できるのも嘘じゃなかった。何を隠そう、ほぼ始めての出席になる。緊張感や不安、後ろめたさはどうしても出るだろう。
気心が知れた――とまではいかないが、完全に一人で行くよりは気が楽だ。
一方的に恩を買っているのは、情けないと思うけど。
「ま、頑張るしかないか」
「?」
フェイにも聞こえない独り言。
決意を新たにした頃、二人は学長室の前にいた。
彼とまともに話した経験がないのか、フェイはどことなく強張っている。――好感を覚える真面目さではあるが、堅苦しいのは学長も苦手とするところ。
軽く肩を叩き、リラックスを促す。
礼儀のよい機械的なノックで、高価な木製の扉が揺れた。入れ、と直後に応じる声。となりのフェイはやっぱり緊張で堅くなっているが、さてはてどうしたものか。
まあ考えは後にして、遠慮なく学長室へと入らせてもらう。