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騒がしい女 6
「ほ、本当か!?」
「ここで嘘をついてどうするんですか、もう」
フェイにもプライドがあるらしく、こちらを直視しようとしない。少し頬を赤くして、まるでひねくれた子供のようだ。
対して角利は真っ直ぐ。簡単に砕けてしまいそうな少女の手を、力いっぱい握り返した。
「いやあ、助かる! どうにか望み託せそうだ!」
「え、ええ、感謝して――って痛い! 痛いです! もう少し優しくしてください!」
「おっと、悪い」
感極まって加減を忘れていた。女性相手に何てことを。
本当に痛かったのか、フェイは握られた右手をさすっている。……あの白い肌に触れていたと思うと、妙な背徳感が沸き上がってきた。顔も少しばかり熱い。
だがそんな純情、外の大人にはまるで関係ないらしく。
「やっぱりね! フェイちゃん、角利君みたいな馬鹿に弱いと思ったんだよ! ――いてっ!? スリッパ投げないで!」
無粋な外野は一人、高らかに勝利を謳っていた。