騒がしい女 2
さてどうしたものか。直前の出来事がある分、面と向かって声をかけられない。攻撃されただけであれば良かったが、最後は完全に庇われたのだ。後ろめたさも残る。
だが、それはお互いの共通事項だったらしい。さながら初々しいカップルのように、視線を交えて動かなかった。
「ああもう、ほら!」
きっかけは第三者から。
由利音らしき人物が、フェイの背中を前に押す。ついでに病室の入り口をピシャリと閉めた。
密室で、しかし気の楽な静寂。
「た、体調は、如何ですか?」
気持ちを前に出したのは、フェイが先だった。
本音はまったくの逆だけれど、見栄を張って大丈夫だと即答する。が、通じたかどうかは怪しい。彼女は訝しんで、角利を下から上へと観察していた。
「駄目みたいですね」
「す、少しは誤魔化してくれよ! 恥かしいだろ!」
「嘘をついた会長の責任です。それよりも――」
「スマン」
言葉を急かした本能に沿い、深々と頭を下げる。
常に冷静、冷徹なイメージのフェイだったが、これには意表を突かれたらしい。表情こそ伺えないものの、身動き一つしていなかった。
「――どうして、貴方が頭を下げるのですか」
聞こえた声は、氷よりも冷たくて。
ただ角利は、自分の未熟を恥じていた。