傷の話 4
「角利君はさ、ギルドを立て直したいそうなの。昔みたいに大切な人達と、馬鹿みたいに騒ぎたいって」
「……失礼ですけど、その割に中は汚かったですね」
「どうすればいいのか分からなかったからね。将来に対して強い希望があったわけじゃなさそうだし。――話を戻すけどさ、角利君にも自分の生活がある。夢を語っても、最低評価の実技はくつがらないし、両親の遺したお金だけじゃギルドは維持できない。今年はどうにかなってるけど、来年は無理でしょう」
だから。
「フェイちゃんさえ良ければ、ギルドに力を貸してくれないかな?」
「……何故です? 私は会長を攻撃しました。信用を置くべきではない筈ですが」
「まあ女のカン、かな。根っこから悪い人じゃなさそうだし」
「……」
よく当たると噂の、単なる直感だろうに。
しかし朗らかな表情のせいか、彼女なりの信頼ではないかと思うフェイがいた。
「……ギルドの話はお断りします。所属したら私個人、また会長に反感を覚えないとも限りません。なので、由利音さんから――」
「自分の口で断るべきじゃない? だってフェイちゃん、気持固まってないでしょ? だから角利君のことをゴーレムから庇ったし、誘惑に負ける、なんて言うんだよね?」
「……人の領域に土足で踏み込む方は嫌いです」
だが由利音は笑う。よく言われる、と心から楽しそうに。