傷の話 2
「病院、ですか?」
「そこまで大層なところじゃないけどね。あ、角利君は別の部屋で寝てるよ。ちょーっと無茶しちゃったからね。少しは安静にしてないと」
「無茶、ですか」
そんな言葉で片付けられるほど、あの力は優しくなかった。暴力と称しても罰は当たるまい。
「彼、一体何者なんですか? 学生魔術師にしては、かなりの実力者に思えます」
「んー、手短に言っちゃえば、君と同じ天才の部類だと思うよ? 子供の頃は遊んだりしないで、修行ばっかりしてたからね。ああいや、彼にとってはそれが遊びだったのかな?」
ともかく、と由利音は前置きを作る。
――彼女の顔に後悔がにじみ出たのを、フェイは見逃さなかった。辛い話を引きずり出すつもりはないので、まず身振りから割って入る。
しかし由利音は首を振った。気にしなくていい、と付け加えて。
「四治事件、って知ってる?」
「い、いえ、初耳です」
「まあそうだよね、ニュースにもなってないし。……内容はその名の通り、昔の四治会で起こったの。犠牲者は十数名。角利君はその中で唯一生き残った魔術師でね」
「唯一、ですか?」
頷きを返す由利音には、やはり悔恨の色がある。
止めるべきではないかとの思案は、彼女のスムーズな語りによって保留された。