27/168
魔剣乱舞 5
「――は」
莫大な魔力が渦巻く。
一対一なら、誰からも邪魔が入らないなら。
過去の傷に悩まされることなど、ない。
「っ……!」
フェイは直ぐに異変を察知していた。低い姿勢で宙を駆け、魔剣の一撃を叩き込もうとする。
だが遅い。
「戦だ――!!」
開戦を告げる。
第一に響いたのは異音だった。空間そのものが割れ、彼らが悲鳴を上げるような。
それは角利の背後から。重い岩戸を開くように、ゆっくりと開口する。
対峙するフェイの目には、数十本にも並ぶ剣の群れが見えていることだろう。
常識を逸脱した光景は、絶景と評されても不思議ではないかもしれない。無数の剣が宙に浮かび、矛先を一様に並べている姿など普通は見えない。
すべて同じ形で、しかし鞘に閉じ込められていた。戦う意思を否定するように、根元まで刃を隠している。
留まりかけた彼女の足が戻る。肝心の刀身が見えていなければ、脅威にはなりえないと。
なら。
「抜刀!」
たった一言で、花が咲いた。
剣の鞘は例外なく砕けている。微かな陽光を反射する様は、舞い散る花弁を連想させるものでもあった。