魔剣乱舞 4
二人の目論みは見事に的中した。彼らはご丁寧に躊躇までして、二人とも追うために分裂する。
笑えるぐらいの好都合。出せる限りの全力で、薄汚い道を踏破する。目指した空地もそろそろだった。
瞬間。
大地を引き剥がすような爆音が、角利の真後ろで炸裂する。
「うおっ……!?」
副産物は人の力でどうにもならないレベルの突風。浮いた視界の隅には、空中に打ち上げられた追手の姿が。
しかし幸運にも、角利は件の空地へ投げ出される形となった。これなら学園も近い。救助の手まであと少しだ。
――無論。
「外れを引きましたか」
希望はいつだって束の間。
立ち上がろうとした先に、青い追跡者の姿があった。
即座に踵を返すが、逃げようとする意欲は一瞬で潰える。――何もない。四治会の一つ向こう側にあった建物は、ほとんどが瓦礫の山と化している。
魔術が原因だとしても、それは恐怖を植え付けるのに十分だった。こんな相手と、戦う? 考えただけで全身が凍る。
フェイにとっても重労働だったのか、澄ました顔は疲労の色を滲ませていた。
「さすがに数が多すぎましてね。多少の無茶でしたが、追い付けました。……さあ、考えを改める気はありますか? ここにはもう、私達しかいませんよ?」
「――私、達?」
この後に及んで恭順を迫るフェイに構わず、その一言だけが聞こえていた。
私達だけ。他には誰もいない。敵と自分、力の影響がしっかり届く組み合わせだけ。わずらわしい第三者の介入はありえない。
危機的状況にも関わらず、角利は口端を歪めた。混乱状態に近かった身体が、頭が、一瞬のうちに冷却される。
意識を、戦闘へと切り替えるために。