魔剣乱舞 2
「都市の開発から置き去りにされた場所とはいえ、容赦ねえな……」
「と、とにかく逃げるとしよう。人目の多いところなら襲われたりしないだろうし、これだけの音だからね。既に大勢の方が気付いている筈で――」
「ええ、敵ッスけどね」
途端、魔術を発動させた浮浪者たちが二人を囲む。
男達の血走った目。青年は微かに悲鳴を漏らし、角利の背中へ身を寄せた。
「な、な、なんだお前達は!? 僕は雇い主だぞ!?」
「アンタ金あるんでしょう? 誘拐して、身代金でも要求しようって魂胆じゃないッスか?」
「な、何ぃ!?」
彼は案の定パニックに陥った。いい加減ストレスが限界に差し掛かってくるが、ここで見捨てて得はない。浮浪者の手に渡るにしても、フェイの追跡から逃れるなんて不可能だ。
青年は魔術を発動させる気構えではない。貧弱すぎて笑えてくるが、さっきの一撃で使い切ったんだろう。
一方の角利にも、全員を蹴散らせる余力はない。
考えている間にも、敵は徐々に包囲を縮めていった。獲物へ飛び掛かるタイミングを、今か今かと待ち受けて。
来る。
「っ!」
一か八かの反撃。
縦に軌跡を描く漆黒の魔剣は、纏った魔力のすべてを衝撃に変換。
弾き飛ばす。
生々しい打撃音、彼らの嗚咽が聞こえてくる。――それだけで目眩が、過去の何かが、衝動染みた暴力となって襲ってきた。
掻き消してくれるのは激情だけ。
振り返りながらの一閃で、更に浮浪者達――魔術師どもを吹き飛ばす。
だが安心はやってこない。潜んでいた連中が、まだいる。まるで巣から湧き出てくるアリみたいだ。