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魔剣乱舞 1
一つ向かいの路地へ抜けたところで、角利の体力が限界に達した。
先に進んでいた青年は、こちらの姿を見るなり引き返す。吐き気や震えは収まりつつあるものの、失ったスタミナまでは即座に回復しない。
久々の魔術を使ったのも影響している、特に右腕は、筋肉痛に近い鈍痛を訴えていた。
「大丈夫かい?」
「……俺のことは気にしないでいいッスよ。貴方は先に」
「そんなことは出来ないよ。ほら手、掴んで」
「……どうも」
にべもない抑揚で厚意に甘える。
名乗りもしない青年は安心の笑みを浮かべた。――疑わないなんて無茶がある。この男、角利を何かしらの形で利用する気だ。
今直ぐに唾でも吹っかけたい気分だが、また癇癪を起されても困る。せいぜい疑惑の視線を向けるだけで勘弁してやろう。
角利達の抜けた路地裏からは、定期的な轟音、金属音が反響している。フェイを狙っている浮浪者たちが攻撃に転じたのだろう。
しかし、さすがに評価Sの生徒。快進撃は止まらず、宙に木材を打ち上げたりしている。