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魔術師は現代社会に殺される  作者: 軌跡
第一章 EとS
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満身創痍 3

 一閃のもと、両断する。

 ――筈だった。

 浮浪者の一人だ。相当な金が約束されているのか、満身創痍でも立ち向かってくる。

 この気を逃さず逃げるしかない。青年を説得する必要もあるが、彼だってフェイがどれだけ危険なのか分かっている筈だ。

 棒立ちしている青年の元へ、角利は善意から歩み寄る。


「寄るな!」


 頭ごなしに怒鳴られた。

 拒絶を体現するのは雇われた浮浪者たち。魔術を使っていない相手だろうと、喜々として魔剣を手にする。

 角利はなおも魔術を使わない。いや使えない。

 過去の傷を開くなんて。それを連想する状況で、どうやって成せと言うのか――


「ふ――!」


 割り込んだのは、青い矮躯だった。

 彼女はその後も敵と対峙する。まるで角利を庇うように。

 しかし甘えるわけにはいかない。反対しなければ、彼女は殺人を犯してしまう。


「っ――」


 その光景を思い描いた途端、全身の悪寒が強くなった。

 振り払おうと、角利は何度も首を振る。が、効果は表れない。妙な話だがこのままじゃフェイの足枷になってしまう。

 落ち着けと心で唱えるものの、呼吸は荒くなる一方。思考は千々に乱れ、優先すべき目的すら見えなくなる。

 真後ろで響く剣戟けんげき。急げと頭でいくら命じても、身体は言うことを聞かない。

 頭の中に過るのは、血の海。自分が何かを、大切なものを断った事実。

 誰が? 誰かを? 

 どうしようもなかった? 

 いや違う、自分が、この手で――


「はあっ!」


「ぐ……」


 轟音と共に、戦いの音色が途切れる。

 どうにか振り向いた先にはフェイがいた。彼女は呼吸すら乱さず、淡々と獲物を見下ろしている。

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