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魔術師は現代社会に殺される  作者: 軌跡
第一章 EとS
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彼らのお仕事 5

「私は群れている魔術師が嫌いです。それは魔術の価値、権威を恥かしめるモノ。私たちが希少な存在である以上、群衆となる必要はないでしょう?」


「な――」


 青年の態度は一転、驚愕へと切り替わった。

 現在の魔術師を否定する発言。その特権と価値を掲げる者は、決して少ないわけではない。世代としては少し前、角利の祖父ぐらいにまで遡るのだが。

 故に、青年は意外を感じたのだろう。角利も唖然とするだけだった。まさか祖父と同じような思想を、同い年の少女が語るとは。


「ち、血迷っているのか!? いま時、そんな化石のような理想を――」


「結構です。私の信じるものを、赤の他人にまで共有してもらおうとは思いません」


「……そうかね。では君達」


「っ」


 殺意に満ちた目が二人を睨む。浮浪者も含めて、数は十人強。評価Sのフェイ一人でもどうにかなる人数だ。

 しかしこの状態で倒していいのかどうか。相手が大手ギルドである以上、逆に問題を深刻化させてしまう。


「死ね」


 傲慢な性格に雇われ、浮浪者たちは一斉に飛び掛かった。

 しかし一閃。

 迷いもなく、フェイが彼らを蹴散けちらしたのだ。


「――」


 開いた口が塞がらないのは、角利も青年も一緒。

 宙に打ち上げられた、敵勢は生々しい音を立てて落ちてくる。全員が呻き声を漏らしている辺り、死者は出ていないらしい。

 もちろん、今後については分からないが。


「ひっ」


 フェイが一歩、前に出る。

 青年は怯えて後退するだけだ。直ぐ反撃しない辺り、戦闘系の魔術師ではないらしい。すっかり青ざめて、走り出す瞬間を探っている。

 彼女は本気だ。威嚇しているわけではない。横からも分かる侮蔑の眼差しを、怯えきった魔術師に向けている。

 手に握られているのは一本の剣。魔力で編まれた、魔剣と呼ばれる代表的な魔術だ。浮浪者を打ち上げたのもソレによる一撃だろう。

 あふれるばかりの殺意。青年が向けたものが児戯じぎに思えるほど、フェイの信念は鮮烈だった。

 このままじゃ、取り返しのつかないことになる。


「止めろっ!」


 庇う必要なんてないのに、ついつい漏れてしまった本音。

 同じだけの敵意が、角利に向けられた瞬間だった。


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