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命尽くし、再燃 9
「っ!」
直後、角利の身体にも異変が起こる。
本当に些細な、あっさりとした破裂音。
人の皮が弾け、竜の総身が剥き出しになった。
強引かつ豪快な金属音が口から響く。即死を狙った御法の刃を、牙が寸前で噛み堪えたのだ。
今度は敵が無防備を晒す番。跳ね上がった爪が、御法の皮膚を裂きにいく。
回避は間に合わず、袈裟切りに似た傷が残った。噛んでいた御法の魔剣は砕け、追ってコンクリートの上に血痕が続く。
「――?」
それに違和感を覚える角利だったが、直ぐ敵の方へ向き直った。
意識はどうにか保てている。魔術の発動も問題ない。
ただ、頭の片隅で聞こえていた声は巨大化していた。可能なら、力の限り両耳を塞ぎたいぐらい。戦え、殺せと、黒い本能が押し寄せる。




