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命尽くし、再燃 3
然して驚く必要はあるまい――包帯を解かれながら、即席の覚悟を決める。
渡された鏡に映っていたのは、顔半分が別の生物になった化物。
顔は左半分、頬から上が動かない。目蓋を降ろしたままだ。眠っている――なんて表現は、あながち外れでもないだろう。
この半顔が目覚めた時、角利という存在が消えるのだから。
「……神宮の方だけどね、まだ薬草は見つかってない。専門の魔術師が言うには、厳しいだろう、って」
「……」
呆気なく希望は断たれた。
しかし驚く気分にはなれない。ありえる展開だったし、範囲も範囲だ。数時間で見つかるものではあるまい。
他の場所に捜索の手を広める候補もある。が、果たして間に合うのかどうか。
世界の中で、人の手垢に染まっていない場所はかなり少ない。明治神宮の森だって、土台は人工林だ。天然に近いが、それでも人の手が入っている。
魔術は、文明に殺されるしかない。
泣きわめくことが出来れば、いっそどれだけ楽だろう。この先に待っている結末を、冷たい悲観の中で過ごせれば。