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命尽くし、再燃 2
経緯はともかく、自分は生き残った。そして治療のため、ベッドの上に転がっている。
確認を取りたい欲求を堪え、角利は右手を上げてみた。
変化は、更に深刻化している。
恐らくは右腕全体。感覚自体に変化はないが、布の盛り上がりを見るに正解だろう。
他の生物に入れ換わっている実感はない。己の意思で動かせるし、日常生活も問題なく営める。時間制限が可視化したぐらい。
だから、致命的だった。
こんな場所にいるべきではない。大勢の人を巻き込む前に、猫さながら消えるべきだ。
「はいはい、妙なことは考えないようにー」
「……」
深刻のしの字もない声には、怒る気力さえ湧かなかった。気落ちしている人間には明るささえ毒だと、この女分かってるんだろうか?
もっとも、彼女が前向きなのは抑揚だけ。表情は珍しく暗い。
「左目、どう? 見える?」
「いや、これがもう全然。……失明したんスか? 俺」
「えっとね……まあ思ったより元気そうだし、見せても大丈夫かな」
言葉使いだけで、自身の起った変化は想像がついた。