近付く終幕 21
「まずい……っ!」
フェイが行った曲がり角を、遅れて通過する魔術師。
駄目だった。
ワイバーンが彼女の上半身に噛み付き、そのまま上空へと連れ去っていく。辛うじて見える上着はピクリとも動かず、獣に噛み砕かれるだけだった。
「――くっそおおおぉぉぉおおお!!」
激情に任せ、ワイバーンに無数の魔剣を叩き込む。
しかし距離もあって、捕食者は空を飛び回るだけだった。掠りすらせず、そのまま住宅街の方へと消えていく。
「ふん、馬鹿者が」
標的が死んだというのに、御法は余裕を崩さない。驚きを通り越して怒りさえ湧いてくる。
この男さえいなければ。
こんな終わり方、迎えなくて済んだのに。
「まあよい。これだけ魔物が拡散したのだ。民衆どももさぞ怯えていることだろう」
「――それだけか、ジジイ」
「あ?」
「他人の命に首突っ込んで、他に言うことはねえのかって聞いてるんだ!!」
魔剣が飛ぶ。御法の首めがけて、魔術師の憤怒を代弁する。
だがすべては泡と散った。盾になったドラゴンの甲殻、表面にヒビさえ入らない。どれだけの物量で押そうと同じことだ。
「温い!」
巨体に似合った一撃が、冷静を欠いた角利を吹き飛ばす。