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近付く終幕 20
超重量の落下物が、御法の背後に現れた。
角利の攻撃よりも先に、黒金の拳が振り下ろされる。決着が間近だった勝負を、根元からご破算にしてしまう一撃だった。
こうなると、普通の魔術師では手を出せない。ただ剣呑な存在として、睨み付けるのが精々だ。
「ふん、戦わんのか。ならばワシはフェイを捕える。邪魔をするなよ?」
「っ……」
威風堂々、ドラゴンは彼女の落下地点に向けて歩き出した。
無論、黙って見ている角利ではない。背後に展開した魔剣を一斉に叩き込む。
指先一本も止まらない現実を、まざまざと見せつけられるだけだったが。
その時。
「フェイ!?」
彼女がわざわざ、ドラゴンの正面に現れた。
少女は抵抗する素振りもなく、背中を向けて去っていく。魔術を使わない、並大抵の脚力による移動だった。
焦燥に狩られないのは御法だけ。角利はドラゴンに目もくれずフェイを追う。
頭上には、急降下する一匹のワイバーン。
眼差しが、魔術師という餌を求めている。