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近付く終幕 19
「っ――!」
立つ。体力が残ってなかろうと、せめて時間だけは稼ぐ。
傷は先程と同様、自働的に治り始めていた。魔物化も捨てたもんじゃない。
「初志貫徹、か? 無駄なことを……!」
矢が生成され、撃たれるまでの数秒間。
あまりにも迷いのない、目を奪うほど洗練された動作があった。
空気が割れる。
そう錯覚しかねない会心の一撃。――直感に行動を委ねなければ、回避など成立する筈もなかったろう。
背後、着弾した一軒家が爆散する。
御法は三射目の用意に入っていた。双方の間合いを考慮すると、止めるのはおよそ不可能。躱した上で、残身に入っている彼を攻撃するしかない。
もう問題は、可能不可能の域を超えている。
やらなければならない……!
光が弾ける。発射の衝撃で、建物の骨格さえ揺さ振って。
「ふ――!」
「!?」
限界を迎えている肉体は、土壇場の賭けに勝利した。
次は認めない。隙を誤魔化す散弾を耐える覚悟で、力の限り地面を打つ。
魔術の身体強化が成す、滑空にも近い移動の最中。
「時間切れだ」




