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近付く終幕 16
「あーあ、せめて例の薬草さえ見つかればなあ。皇居の庭にあるって聞いたけど、この状況下じゃ交渉もねえ……」
「森独自の生態系が守られてる場所に、ってやつッスか?」
「そうそう。オマケに確立も低いんだよ? せめて歩いて行ける距離にあればなあ……」
「……」
ここは東京の代々木。そこまで都合のいい森なんてある筈がない。せめて明治神宮にあるだけで――
「そうだ、明治神宮……」
「は? あそこの森がどうかした?」
「明治神宮の森って、天然に近い状態だって聞いたことあるッスよ。専門家がいろいろ計算した上で作ったとか」
「へえ……じゃあ、もしかして!」
フェイから聞いた、治療用の薬草があるかもしれない。
開いた花のような笑み向け、由利音は角利の手を取った。千切れんばかりに上下して、喜びの度合いをアピールしてくる。
「じゃあさっそくいこ! もしかしたら、フェイちゃんにだって効果が――」
直後だった。
居間を、謎の衝撃が揺らしたのは。