近付く終幕 15
「そういや由利音さん、身体の方は大丈夫ッスか?」
「うん、今のところはねー。フェイちゃんからの感染だっけ? 個人差はあるんじゃないかな?」
「かもしれないッスね。俺もこの状態ですし」
「……」
変化した片手を見つめる由利音は、やはり眉間に皺を寄せている。
情けない。御法という規格外の敵がいる中で、わざわざ心配させてしまうなんて。
「――ねえ角利君、すぐ治療を受けに行ったら? 最低でも、進行は抑えられる筈でしょ? そうすれば――」
「安全な治療法が見つかるまで待てる、ですか?」
口を紡ぐ由利音。当てずっぽうだったが、無難な解答でもあったらしい。
理解できる提案ではある。一番希望に繋がっていて、一番安全な選択だ。
「……お断りッスよ、ベッドの上で縛られるなんて」
「でも、他に解決策はないよ? 医療方面だったら魔術と科学が手を取り合うチャンスもあるしさ、考えてくれないかな?」
「フェイはどうなるんです? 彼女の感染、止められるんですか?」
「……さっき角利君から聞いた話だと、かなり厳しいと思う。無意識に発動する魔術なんでしょ? だったら必ず政府は、魔術師は、フェイちゃんを殺しに来る。自分たちの名誉を守るために」
「汚いもんッスね。大人ってのは」
「かもね。……でも本当、よく考えて。フェイちゃんは、私が責任を持って逃がすからさ」
それでも心は微動だにしない。彼女を見捨てるなんて、一生後悔してしまう。
せめて生きている間は。角利の味方にならずして、誰の味方になるのか